質量分析とは

・質量分析とは

 質量分析(Mass spectrometry)とは、原子、分子、クラスター等の粒子を何等かの方法で気体状のイオンとし(イオン化:イオン化法を参照)、真空中で運動させ電磁気力を用いて、あるいは飛行時間差によりそれらイオンを質量電荷比に応じて分離・検出する事です(質量分離の原理参照)。決して重さを量る事ではありません(重さを計るのは天秤の仕事です)。質量電荷数比に応じて分離・検出されたイオンをもとに、横軸にm/z 、縦軸にイオンの相対強度をとった棒グラフをマススペクトル(Mass spectrum)と呼びます。

・質量分析計

 質量分析計(Mass spectrometer)とは、質量分析を行うための装置です。装置は大きくイオンを作るイオン源、作ったイオンを分離分析する分析部、分離されたイオンを検出する検出部、検出されたデータを解析処理するデータ解析装置の4つに分けられます。詳細は質量分析計とは(現在作成中)を参照して下さい。

・マススペクトルの読み方

 下のマススペクトルはステアリン酸メチル(分子量:298)のDEIマススペクトルで、スペクトル中最も高質量側に出現しているピークm/z 298は分子イオン(Molecular ion)で分子量情報を与えています。この様な分子量情報を与えるイオンを一般に分子量関連イオン(Molecular-related ion:中性分子Mから電子1個が失われたM+.、電子1個が付加したM-.、プロトンが付加した[M+H]+、プロトンが失われた[M-H]-、ハイドライドが失われた[M-H]+、アルカリ金属(Naなど)が付加した[M+Na]+などがあります)と呼びます。ただ、試料やイオン化法(特にEI法では)によっては全く分子量関連イオンが出現しない場合があります。その場合はソフトなイオン化法を用いる事で分子量関連イオンを確認できます(イオン化法を参照)。
 分子イオンより低質量側に出現するイオンをフラグメントイオン(Fragment ion)と呼びます。フラグメントイオンは分子イオンが分解したもので、試料分子の構造情報を与えます。
 さらに、空気、GCカラムの液相、マトリックスやフタル酸エステル類などのバックグラウンドピークも重なってきます。
 スペクトル中最もイオン強度の高いイオンをベースピーク(Base peak)と呼び、相対強度を100%としスペクトルを規格化します。
ステアリン酸メチルのDEIスペクトル

・モノアイソトピック質量と平均質量

 通常使用している原子量や分子量は、天然同位体の平均値(平均質量(Average mass))を使用しています。質量分析の場合は、試料分子を構成する各元素の主同位体のみからの精密質量”モノアイソトピック質量(Monoisotopic mass)”を使用します。たとえば水素や炭素の同位体存在比はわずかですが、数が増えると無視できなくなり、モノアイソトピック質量と平均質量に差が出てきます(主な元素の天然同位体比参照)。図は分子量1,295のペプチドAngiotensin Iと分子量2,093のACTH 1-17、分子量3,147のSomatostatin 28のMALDIスペクトルですが、分子量が1,000をこえると同位体ピークの強度も60%を越え、分子量2,000を越えると分子イオンピーク[M+H]+より同位体ピークの方が大きくなります。
Angiotensin IACTH 1-17Somatostatin 28

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